Menu

 



お子さんの歩き方、立ち方

[2015年12月04日]

お子さんの立ち方、歩き方に目を向けたことはありますか?意外に気にしていなかったりしませんか?立ち、歩きは健康の基本であり、運動能力にも大きく関わっています。

なぜこんな文章を書こうと思ったのか。実は日頃から健診や診察中に気になる子がとても沢山みえるからです。

かなり長文です。めんどくさい方は太文字の部分だけでも読んでください。

生後1歳半頃のお子さんの立ち方を見てもらえると正しい立ち方のヒントが沢山あります。重力にあらがって立つために脳はとても工夫をしています。倒れないためにゆらゆらしながら、背骨周りの筋肉を微調整して立っています。そして3歳頃に立ち方はほぼ完成します。この頃の子供たちの立ち方はとても美しい。無駄のない立ち方をしている子が沢山います。本来であればここから更に立ち方、歩き方の進歩が始まるはず(身体能力的には10歳台までは発達します)。だが、現実はそう行ってはくれません。周囲の環境によって老化への一歩を歩み始める子が沢山います。「エッ、子供が老化?」と不思議に思われるかもしれません。もちろん肌はピチピチです。白髪も生えていません。でも、立ち居、振る舞いは老化しはじめるお子さんが沢山います。立ち居、振る舞いの老化とは、簡単に言うと固まってゆくことです。最初の兆しは微々たるもので注意しないと分かりませんが、毎日子供を見ている小児科医としては気になります。

人は年をとってゆくと どんどん体が固まってゆきます。それは日々の生活で固まるような歩き方、立ち方、座り方をしていると加速します。「固まる」というと実感が持てない方もいるかもしれません。身体が固まったときの症状で代表的なものは肩こり、腰痛です。そう言われると固くなっている事を自覚できる方も多いのではないでしょうか。

固まるような立ち方とは?歩き方とは?

固める立ち方の特徴は、足裏の重心が小指よりの外側で前の方にあります。大げさにやると前のめりで、O脚になります。これは脚の外側の筋肉に力が入った状態です。この状態を続けてゆくと、足回り、さらに腰回りの筋肉が固まってきます(固めるのが習慣になります)。この状態がさらに続くと腰痛が始まり、腰が曲がって来始めます。その先は言わなくても分かりますよね。典型的な杖をついた老人の姿勢が出来上がります。最近は中学生でも腰痛を訴える子がいます。中学生でおじさんの身体とは・・・・悲しい現実です。

固まった歩き方は、重心移動をうまく使わずに足裏で地面を蹴って歩きます。まず、正しく立てていないのでどうしても必要のない筋肉を使って、必要以上に力が入った状態から動き始めとなります。本来であれば立っている状態から身体が前へ傾けば倒れないために自然に足が前に出ます。最初から地面を蹴ったりする必要はないのです。動き始めたらある程度は慣性の法則で歩いて行けます。

 

自分の子供は小学校、幼稚園に通っているので運動会などで実際の子供の動きを間近で見る機会があります。びっくりしましたが多くのお子さんの立ち方、歩き方に問題が出始めていました。小学校5年生以上になると固まっていない子を探すことの方が難しくなります。走る姿を見るとびっくりするぐらい老化が進んでいます。これは恐らくは外で普段から歩いたり、走ったりする機会が少ないことが大きな原因なのでしょう。公園に遊びに行ってもDSやっているのでは友達関係としては必要なのかもしれませんが、健康的にはあまり意味がありません。また、自転車はどうしても屈筋を使う構造上 乗りすぎると体が固まりやすくなります。早くに乗ることを覚える必要はありません。小学校に入るまでは出来るだけ自転車は与えず、歩いたり、走ったりして自分の足で移動することを促しましょう。

理想は歩いて公園や土手、広場などへ行って、体を使った遊びをする事です。ゲーム性を考えてドッジボール、サッカー、野球、バスケットボールなどのスポーツをするのもいいでしょう。鬼ごっこや缶蹴り、かくれんぼもいいですね。子供の頃の適度な運動は将来大人になったときの健康状態に大きく関係してきます。子供の頃の運動不足を、大人になってから取り返すために頑張ってもなかなかうまくいきません。もちろん、どの年代でも適度な運動をすることは良いことなのは間違いありません。大人になってしまったお父さん、お母さんも適度な運動は老化を抑えます。適度なと言うところが大切です。あちこちが筋肉痛になるような運動は筋肉の損傷から考えるとお勧めしません。「あ~いい汗かいたな~」と気分良く終われる程度の運動が理想的でしょう。

 

また、3歳のお子さんの歩き方を健診で見ると、すでに立つとき、歩くときの重心の位置が外側になってしまっているお子さんが結構な数います。と、言うことはそれ以上のお子さんはもっと立ち方が悪い傾向があります。これは、周りの大人の歩き方を見てまねをしてしまっている可能性もありますが、それ以外でも気をつけて欲しいことがあります。実はいろいろあるのですが、以下の2点は特に注意してください。

まず、1歳前に歩き始めてしまったお子さんは、ハイハイの期間が充分に取れていない可能性があります。ハイハイは身体の発育上とても大切な行動です。骨盤の発達、体幹の筋肉の発達に大きく関わってきますので、早くに立ってしまったお子さんはご両親も一緒にハイハイをして遊ぶようにしましょう(ハイハイで競争したりなど)。当然のことですが、大人の方も四つ足で歩くことは肩甲骨まわりの筋肉を緩ませたり、骨盤周りの筋肉を緩ませたり、体幹の筋肉を使ったりなど良いことが沢山です。自分のため、お子さんの為に一緒にハイハイしてみませんか?

次に靴の選び方です。最近の靴はとてもファッション性に富んでいますが、どうしても重心が外側になってしまうものがほとんどです。クロックスなどに代表されるサンダルは歩きにくく、どうしても下肢に不自然な力が入ってしまい、ぎこちない歩き方になってしまいます。短時間だけならまだしも、普段使いには向いていません。ブーツは底が固く、足首が固定されてしまうので 立ち方、歩き方共に悪くなります。選ばないことをお勧めします。今のおしゃれよりも将来のおしゃれのためです。立ち方、歩き方が悪いとO脚にもなりますし、実際以上に足も短く見えます。

では、どういう靴がいいのでしょう。底が固くない運動靴を選ぶようにしましょう。更に、立ったときにO脚気味にならないかは最低限チェックしたいものです。毎日履くものです。服やおもちゃに使うくらいなら、靴にある程度のお金をかけるようにしましょう。

最後に、子供は身の回りの人間の姿を観察し、参考にして歩き方、姿勢、話し方などの習慣を身につけます。一番身近なお手本はお父さん、お母さんです。偉そうにこの文章を書いている私も歩きの修正中です。みんなでお手本になるように気をつけましょう。

小児・アレルギークリニック in GoDo